今もまだ…
これは、一匹の化け物が恋に落ち、家族を作り、ひとつの世界を作ってしまうお話。
「人なんてすぐに死んでしまう」
人間というのは愚かだ。
すぐに繁殖をする癖に、寿命は短い。
家族?そんなものを作っても意味がないだろう。
必死に子孫を残そうとする。
くだらない。
人類が私のように不老不死なら、子孫を残す必要もない。
そう、私は化け物だ。
人間から見ると、化け物ということらしい。
私から見れば人間のほうがよっぽど化け物だ。
自ら同じ種族の仲間と殺しあう。
これほど愚かで恐ろしい動物がいるだろうか?
くだらない。
今日も朝から警報が鳴り響く。
戦争だ。
毎日のように空を戦闘機が引き裂いていく。
それをいつものように丘の上で眺める。
すると、背後から一人の人間の気配を感じた。
後ろを振り向く。
正解だ。
一人の少年が、銃を肩から下げてこちらに歩いてきた。
「君、ここはそのうち戦場になる。離れたほうがいいぞ」
こいつは私を人間だと思ってるらしい。
少し驚かせてやろうか。
「小僧、私の髪を見るがよい」
「ん?長い綺麗な髪だな…それがどうした?」
「な、そんなことはどうでもよい、いくぞ」
私は化け物だ。
髪は蛇でできている。こいつは目が悪かったのだろう。
蛇の髪を自在に動かす。
これでこいつも逃げるだr
「おぉ、凄いな!どうやっているんだ!?」
こいつは馬鹿か。
「おい人間!見くびるでない!私はメデューサだぞ!」
すると、馬鹿が笑った。
「メデューサ?あの蛇の化け物の?」
化け物…その通りだ。
「そうだ化け物だ!早くここから立ち去らないと石にするぞ!」
こいつは本当に馬鹿だ。
さっさと消えてくれ。
「はは、可愛い化け物もいるんだな、ははh」
「な、小僧!!!」
こんな奴ごときに力を使ってしまうとは、
「私も随分短気になったものだ」
隣りの石像に目をやる。
あれから半日、すでに夜になっていた。
あんなことを言われたのは初めてだ。
思い出すだけで背筋が凍る。
化け物も背筋だって凍るのだ。
あの時、石像にした後その場に放置しようとしたのだが、
「まったく戦場にならなかったではないか…」
適当な事を言いおって…
そろそろ効果が切れるだろう。
私はメデューサだが、まだ力は完全ではない。
「ははは、ってあれ?」
「もう夜だぞ、いつまで寝ている」
「お?お、おはよう。起きるまで待っていたのか、ありがとう」
「黙れ、ここらは私の縄張りだ。変な奴にうろちょろされては困る」
こいつも家族とやらの茶番劇にさっさと戻ればいい。
さっさと帰ればいい。
「そうだなそろそろ帰るか、今日はどこに泊まろうかな」
どういうことだ?
「自分の家に帰れ阿呆」
すると阿呆は笑う。
「俺、家族いないんだ」
笑っている。
いや、作り笑いだ。
家族がいなくて途方に暮れているのか。
愚かな奴め。
「いつも野宿しているのか?」
「うん」
私も丸くなったものだ。
こんな奴に同情するなど。
化け物失格だな。
笑えてくる。
森にある小屋。
そこが私の家だ。
いつもは一人きりのはずだが。
何故こんなことになってしまったのか…
「なかなかいい家だな」
「黙れ、石にするぞ」
「何故そこまで怒っている」
うるさい。
後悔してもしきれない。
「本当に化け物なのか?」
「そうだ、怖いだろう?」
「いや、全然」
こいつはいつか永遠に石にしよう。
「君にも家族がないのか?」
口が減らないやつだな。
どれだけ質問すれば気が済むんだ。
「家族などとうの昔にどこかへ消えた」
「そ、そうか…」
申し訳そうな顔をするな。
同情などいらない。
家族などいらない。
「なぁ…」
「ちょっとは静かにできんのか。次はどんな質問だ?」
「俺たち似てるな」
「……は、貴様と一緒にするでない」
屈辱だ。
人間如きに似ていると言われるなど…
私は化け物だ。
いつも一人ぼっちだったんだぞ…
おかしい。
目から変なものが流れてきた。
何年ぶりだろう。
「泣いてるのか?」
「泣いてなど…そ、そうだ!お前と一緒にされて悲しすぎて泣けてきおったわ!」
何故泣けてくるんだろう。
わからない。
「なぁ…」
またか、うるさい奴だな。
「このまま生涯を一緒に暮らさないか?」
数年後、戦争は終わった。
それからまた数年して、化け物に子供ができた。
「アザミ!!この子の名前はシオンにしよう!!」
「あまり騒ぐなといつも言っているだろうに」
「悪い悪い、それで、シオンでいいよな!?」
「仕方ない、そこまで言うなら…」
君と出会ってから10年が経った。
まさかこんなことになるとは。
でも、すごく安心する。
そばにいるだけで、安心する。
案外、家族もいいかもしれない。
でも
「おぬし、あの頃に比べて顔つきがよくなったではないか」
「はは、そういうアザミは、全然変わらないな」
これだ。
人間と化け物の違い。
人間の寿命は短い。
それに比べて私は不老不死だ。
いつかまた一人ぼっちになってしまう。
怖い。
一度この温かさを知ってしまったら。
失うのが怖い。
君だけ一人老いていく。
気づいても、
耐えてられない。
それからまた数年。
シオンは少し大きくなった。
私は…
蛇を集めた。
力を全て使う。
少しずつ新しいセカイが造られていく。
力が全て無くなっても構わない。
終わらないセカイを作った。
「一緒に行かないか?」
ドアはいつになっても開かれない。
あれからいくつの雲が流れただろう。
シオンは元気だろうか。
「ふ、こうなるだろうとは思っていたがな…」
笑えてくる、自分の情けなさに。
空を見る。
腹が立つほどに晴れていたはずが、
どんどん空が歪んで見えてきた。
いつのまにか、
目が涙であふれていた。
あの時とはまた違う涙。
「そ、うだ…どうせ人間なんて…すぐに死んでしまう…」
どっちにしろいずれ一人ぼっちになる。
ただその時が早かっただけだ。
「それならもう、興味もない」
セカイに一人消えようか。
涙が止まらない。
絶対に来ないだろうとは思っていた。
許さない。
愛してる。
貴方に出会えた世界から
どうしても貴方を奪われたくなくて
だからこのセカイを作ったんだ
もし、永遠に終わらない世界があったとしたら
おしまい
「人なんてすぐに死んでしまう」
人間というのは愚かだ。
すぐに繁殖をする癖に、寿命は短い。
家族?そんなものを作っても意味がないだろう。
必死に子孫を残そうとする。
くだらない。
人類が私のように不老不死なら、子孫を残す必要もない。
そう、私は化け物だ。
人間から見ると、化け物ということらしい。
私から見れば人間のほうがよっぽど化け物だ。
自ら同じ種族の仲間と殺しあう。
これほど愚かで恐ろしい動物がいるだろうか?
くだらない。
今日も朝から警報が鳴り響く。
戦争だ。
毎日のように空を戦闘機が引き裂いていく。
それをいつものように丘の上で眺める。
すると、背後から一人の人間の気配を感じた。
後ろを振り向く。
正解だ。
一人の少年が、銃を肩から下げてこちらに歩いてきた。
「君、ここはそのうち戦場になる。離れたほうがいいぞ」
こいつは私を人間だと思ってるらしい。
少し驚かせてやろうか。
「小僧、私の髪を見るがよい」
「ん?長い綺麗な髪だな…それがどうした?」
「な、そんなことはどうでもよい、いくぞ」
私は化け物だ。
髪は蛇でできている。こいつは目が悪かったのだろう。
蛇の髪を自在に動かす。
これでこいつも逃げるだr
「おぉ、凄いな!どうやっているんだ!?」
こいつは馬鹿か。
「おい人間!見くびるでない!私はメデューサだぞ!」
すると、馬鹿が笑った。
「メデューサ?あの蛇の化け物の?」
化け物…その通りだ。
「そうだ化け物だ!早くここから立ち去らないと石にするぞ!」
こいつは本当に馬鹿だ。
さっさと消えてくれ。
「はは、可愛い化け物もいるんだな、ははh」
「な、小僧!!!」
こんな奴ごときに力を使ってしまうとは、
「私も随分短気になったものだ」
隣りの石像に目をやる。
あれから半日、すでに夜になっていた。
あんなことを言われたのは初めてだ。
思い出すだけで背筋が凍る。
化け物も背筋だって凍るのだ。
あの時、石像にした後その場に放置しようとしたのだが、
「まったく戦場にならなかったではないか…」
適当な事を言いおって…
そろそろ効果が切れるだろう。
私はメデューサだが、まだ力は完全ではない。
「ははは、ってあれ?」
「もう夜だぞ、いつまで寝ている」
「お?お、おはよう。起きるまで待っていたのか、ありがとう」
「黙れ、ここらは私の縄張りだ。変な奴にうろちょろされては困る」
こいつも家族とやらの茶番劇にさっさと戻ればいい。
さっさと帰ればいい。
「そうだなそろそろ帰るか、今日はどこに泊まろうかな」
どういうことだ?
「自分の家に帰れ阿呆」
すると阿呆は笑う。
「俺、家族いないんだ」
笑っている。
いや、作り笑いだ。
家族がいなくて途方に暮れているのか。
愚かな奴め。
「いつも野宿しているのか?」
「うん」
私も丸くなったものだ。
こんな奴に同情するなど。
化け物失格だな。
笑えてくる。
森にある小屋。
そこが私の家だ。
いつもは一人きりのはずだが。
何故こんなことになってしまったのか…
「なかなかいい家だな」
「黙れ、石にするぞ」
「何故そこまで怒っている」
うるさい。
後悔してもしきれない。
「本当に化け物なのか?」
「そうだ、怖いだろう?」
「いや、全然」
こいつはいつか永遠に石にしよう。
「君にも家族がないのか?」
口が減らないやつだな。
どれだけ質問すれば気が済むんだ。
「家族などとうの昔にどこかへ消えた」
「そ、そうか…」
申し訳そうな顔をするな。
同情などいらない。
家族などいらない。
「なぁ…」
「ちょっとは静かにできんのか。次はどんな質問だ?」
「俺たち似てるな」
「……は、貴様と一緒にするでない」
屈辱だ。
人間如きに似ていると言われるなど…
私は化け物だ。
いつも一人ぼっちだったんだぞ…
おかしい。
目から変なものが流れてきた。
何年ぶりだろう。
「泣いてるのか?」
「泣いてなど…そ、そうだ!お前と一緒にされて悲しすぎて泣けてきおったわ!」
何故泣けてくるんだろう。
わからない。
「なぁ…」
またか、うるさい奴だな。
「このまま生涯を一緒に暮らさないか?」
数年後、戦争は終わった。
それからまた数年して、化け物に子供ができた。
「アザミ!!この子の名前はシオンにしよう!!」
「あまり騒ぐなといつも言っているだろうに」
「悪い悪い、それで、シオンでいいよな!?」
「仕方ない、そこまで言うなら…」
君と出会ってから10年が経った。
まさかこんなことになるとは。
でも、すごく安心する。
そばにいるだけで、安心する。
案外、家族もいいかもしれない。
でも
「おぬし、あの頃に比べて顔つきがよくなったではないか」
「はは、そういうアザミは、全然変わらないな」
これだ。
人間と化け物の違い。
人間の寿命は短い。
それに比べて私は不老不死だ。
いつかまた一人ぼっちになってしまう。
怖い。
一度この温かさを知ってしまったら。
失うのが怖い。
君だけ一人老いていく。
気づいても、
耐えてられない。
それからまた数年。
シオンは少し大きくなった。
私は…
蛇を集めた。
力を全て使う。
少しずつ新しいセカイが造られていく。
力が全て無くなっても構わない。
終わらないセカイを作った。
「一緒に行かないか?」
ドアはいつになっても開かれない。
あれからいくつの雲が流れただろう。
シオンは元気だろうか。
「ふ、こうなるだろうとは思っていたがな…」
笑えてくる、自分の情けなさに。
空を見る。
腹が立つほどに晴れていたはずが、
どんどん空が歪んで見えてきた。
いつのまにか、
目が涙であふれていた。
あの時とはまた違う涙。
「そ、うだ…どうせ人間なんて…すぐに死んでしまう…」
どっちにしろいずれ一人ぼっちになる。
ただその時が早かっただけだ。
「それならもう、興味もない」
セカイに一人消えようか。
涙が止まらない。
絶対に来ないだろうとは思っていた。
許さない。
愛してる。
貴方に出会えた世界から
どうしても貴方を奪われたくなくて
だからこのセカイを作ったんだ
もし、永遠に終わらない世界があったとしたら
おしまい