- a Stagehand actor - Season.2
公園のブランコに座っていた。
何故かと聞かれれば、自分でもわからない。
ただわかることは、此処がどこだかわからないこと。
学校で苛められたのだ。
無力だから。
勉強も運動もできない人間は苛められるらしい。
小学校、なんて恐ろしい場所だ。
そこにいるのが耐えられず、ここまで逃げてきた。
しかし、今自分がいる現在地が理解できない。
アホだ。
自分でも情けないと思う。
「君、泣いてるの?」
ふいに声をかけられた。ベタなセリフで。
自分と同年代くらいと思われる容姿の女の子。
ツインテールで、ガスマスクをつけている。
「いや、泣いてはないけど…」
ってガスマスクって何だよ!
今普通にスルーしちゃったけどもさ!
おかしいよね!
こんなの全然わかんないよ!
よし、冷静にいこう。ちょっと取り乱し過ぎた。
このガスマスクはツッコんで貰うためのものかも知れない。
誰がその手にのるか。
「えっと、君はここら辺の子かな?」
「いや、走ってたら迷った」
お前もかい!
「君苛められたでしょ?」
何故バレタし。
あぁ、本当に情けない。
「悔しいなら見返してやればいいのに」
見返せることができるならやってるよ。
いや、最初から見返そうとしていたのか俺は。
最初から全部諦めていた気がする。
よし、
「見返してみせるよ」
「はぁ…はぁ…!」
久しぶりに走った。
世界が終わろうとしてる中、不謹慎ではあるが、体が風を切る感覚が心地いい。
小さいころ、理由は忘れたが、突然体を鍛え始めた。
そのおかげで今こうして走ることができる。
イヤホンからはまだあの声は聞こえない。
ただひたすらに丘に向かって走っていく。
さっきのガスマスクを付けた子はまだ見当たらない。
たぶん、あの子はこのイヤホンから流れてくるあの声と関係しているのだろう。
あの子が遠くなるにつれて、あの声も小さくなる。
そして、目的は同じ方向。
これは間違いない。
「とりあえず…、はぁ、あの声が…電波が届く距離まで行かないと…!」
走りながら喋ると酸素を無駄に使う。
馬鹿だね俺は。
独り言で無駄に酸素を減らすとか。
T字路を右へ、左へ。
何回繰り返しただろう。
意外と入り組んでるな…。
本当にこの道であってるのだろうか。
不安しかない。
それにしても、普段映画を見ていると、こういう状況の主人公に憧れたものだった。
非日常的な世界を駆け抜ける主人公は魅力的、
だった。
今では、そんなものは微塵も思わない。
実際にこんな非日常な状況に置かれて、楽しめるはずがない。
確かに、いつもの日常はつまらないものだった。
惰性で学校に通い、家に帰っては勉強もせずにだらだら過ごす。
「ほんと、くそつまらならかったな。」
だからと言って、今が楽しいとは言えない。
未だにこれは夢なんじゃないかと疑っている。
だって、ありえないだろう。
いきなり地球が終わると言われても。
小道から少し大きめの道路に出る。
渋滞は解消されていない。
しまいには暴れだす人間まで出てきた。
もう老若男女は関係ない。
怒号やら赤ん坊の泣き声が遠くで聞こえてくる。
もう治安が混沌と化してくる。
祈りだす神父を追い抜いて、ただ逆方向へと走っていく。
独りで。
渋滞の横をひたすらに走っていく。
すると、見覚えのある後ろ姿が見えた。
「あのヘッドフォン!見つけた!!追いついたぞ!」
このまま近づくと怪しまれるな。
話しかけてもいいが、相手の正体がわからない以上やめた方がいい。
とりあえず、あの声が聞こえてくればあの子が関わってるのことになる。
もう少し近づこう。
『…と12分だよ』
聞こえた。
12分?
残り12分ということなのか?
短すぎる。
その瞬間、前方のガスマスクの少女の走るスペースが早くなった。
そりゃそうだろう。
あと12分で丘まで行くには、死ぬ気で行かなければだめだ。
俺も後を追う。
後ろでは、最後の人間たちが、自分たちを褒め称えて歌を歌っている。
人類讃歌だ。
いや、まだ終わっちゃいない。
その歌をやめてくれ。
まだ諦めちゃだめだ。
人類讃歌の波からもがくように抜け出そうとするが。
足がなかなか動かなくなる。
足が震えて動かなくなってくる。
頭では諦めていない。
しかし体が周りの歌に押しつぶされていく。
とうとう足を止めた。
ガスマスクの少女がだんだん遠くなっていく。
もう、ここはどこだろう。
今までは何も考えずに丘に向かっていた。
しかしここがどこだかわからない。
曇った視界を凝らし、周りを見渡す。
車、人、車、人。
あるのは車の大渋滞と、歌を歌う人々。
あとは大きな建物や、反対車線に公園が見えた。
公園。
「公園…?」
なにか懐かしい気がした。
気がしただけかもしれない。
かもしれない。
気のせいかもしれないけど、足に力が入った。
なんで俺はここまで走ってきたんだろう。
こんなどこかもわからない場所まで。
「生きるためでしょうが、人間しゃいこ~~~~!!!」
もうやけだ。
ここまで来て諦めるのはあまりにも情けない。
今の叫びで人の注目を浴びたが、そんなのは気にしない。
Q,人間に足が生えてるのは何故でしょう。
A,走るためです。
今日からこのスタンスで行きます。
明日があるかはわかりませんが。
いえ、きっとあります。
あるはずです。
あります。
走ります。
はい。
続く
何故かと聞かれれば、自分でもわからない。
ただわかることは、此処がどこだかわからないこと。
学校で苛められたのだ。
無力だから。
勉強も運動もできない人間は苛められるらしい。
小学校、なんて恐ろしい場所だ。
そこにいるのが耐えられず、ここまで逃げてきた。
しかし、今自分がいる現在地が理解できない。
アホだ。
自分でも情けないと思う。
「君、泣いてるの?」
ふいに声をかけられた。ベタなセリフで。
自分と同年代くらいと思われる容姿の女の子。
ツインテールで、ガスマスクをつけている。
「いや、泣いてはないけど…」
ってガスマスクって何だよ!
今普通にスルーしちゃったけどもさ!
おかしいよね!
こんなの全然わかんないよ!
よし、冷静にいこう。ちょっと取り乱し過ぎた。
このガスマスクはツッコんで貰うためのものかも知れない。
誰がその手にのるか。
「えっと、君はここら辺の子かな?」
「いや、走ってたら迷った」
お前もかい!
「君苛められたでしょ?」
何故バレタし。
あぁ、本当に情けない。
「悔しいなら見返してやればいいのに」
見返せることができるならやってるよ。
いや、最初から見返そうとしていたのか俺は。
最初から全部諦めていた気がする。
よし、
「見返してみせるよ」
「はぁ…はぁ…!」
久しぶりに走った。
世界が終わろうとしてる中、不謹慎ではあるが、体が風を切る感覚が心地いい。
小さいころ、理由は忘れたが、突然体を鍛え始めた。
そのおかげで今こうして走ることができる。
イヤホンからはまだあの声は聞こえない。
ただひたすらに丘に向かって走っていく。
さっきのガスマスクを付けた子はまだ見当たらない。
たぶん、あの子はこのイヤホンから流れてくるあの声と関係しているのだろう。
あの子が遠くなるにつれて、あの声も小さくなる。
そして、目的は同じ方向。
これは間違いない。
「とりあえず…、はぁ、あの声が…電波が届く距離まで行かないと…!」
走りながら喋ると酸素を無駄に使う。
馬鹿だね俺は。
独り言で無駄に酸素を減らすとか。
T字路を右へ、左へ。
何回繰り返しただろう。
意外と入り組んでるな…。
本当にこの道であってるのだろうか。
不安しかない。
それにしても、普段映画を見ていると、こういう状況の主人公に憧れたものだった。
非日常的な世界を駆け抜ける主人公は魅力的、
だった。
今では、そんなものは微塵も思わない。
実際にこんな非日常な状況に置かれて、楽しめるはずがない。
確かに、いつもの日常はつまらないものだった。
惰性で学校に通い、家に帰っては勉強もせずにだらだら過ごす。
「ほんと、くそつまらならかったな。」
だからと言って、今が楽しいとは言えない。
未だにこれは夢なんじゃないかと疑っている。
だって、ありえないだろう。
いきなり地球が終わると言われても。
小道から少し大きめの道路に出る。
渋滞は解消されていない。
しまいには暴れだす人間まで出てきた。
もう老若男女は関係ない。
怒号やら赤ん坊の泣き声が遠くで聞こえてくる。
もう治安が混沌と化してくる。
祈りだす神父を追い抜いて、ただ逆方向へと走っていく。
独りで。
渋滞の横をひたすらに走っていく。
すると、見覚えのある後ろ姿が見えた。
「あのヘッドフォン!見つけた!!追いついたぞ!」
このまま近づくと怪しまれるな。
話しかけてもいいが、相手の正体がわからない以上やめた方がいい。
とりあえず、あの声が聞こえてくればあの子が関わってるのことになる。
もう少し近づこう。
『…と12分だよ』
聞こえた。
12分?
残り12分ということなのか?
短すぎる。
その瞬間、前方のガスマスクの少女の走るスペースが早くなった。
そりゃそうだろう。
あと12分で丘まで行くには、死ぬ気で行かなければだめだ。
俺も後を追う。
後ろでは、最後の人間たちが、自分たちを褒め称えて歌を歌っている。
人類讃歌だ。
いや、まだ終わっちゃいない。
その歌をやめてくれ。
まだ諦めちゃだめだ。
人類讃歌の波からもがくように抜け出そうとするが。
足がなかなか動かなくなる。
足が震えて動かなくなってくる。
頭では諦めていない。
しかし体が周りの歌に押しつぶされていく。
とうとう足を止めた。
ガスマスクの少女がだんだん遠くなっていく。
もう、ここはどこだろう。
今までは何も考えずに丘に向かっていた。
しかしここがどこだかわからない。
曇った視界を凝らし、周りを見渡す。
車、人、車、人。
あるのは車の大渋滞と、歌を歌う人々。
あとは大きな建物や、反対車線に公園が見えた。
公園。
「公園…?」
なにか懐かしい気がした。
気がしただけかもしれない。
かもしれない。
気のせいかもしれないけど、足に力が入った。
なんで俺はここまで走ってきたんだろう。
こんなどこかもわからない場所まで。
「生きるためでしょうが、人間しゃいこ~~~~!!!」
もうやけだ。
ここまで来て諦めるのはあまりにも情けない。
今の叫びで人の注目を浴びたが、そんなのは気にしない。
Q,人間に足が生えてるのは何故でしょう。
A,走るためです。
今日からこのスタンスで行きます。
明日があるかはわかりませんが。
いえ、きっとあります。
あるはずです。
あります。
走ります。
はい。
続く